春の谷。


毎年通っていた福島浜通りの渓流は、原発事故でしばらく行けそうもない。
浜通りの春の渓は、桜が明るく咲き盛り、みずみずしい新緑と相まって、飛び出してくるヤマメをいっそう美しくしていた(これがまたスレてなくて無邪気なのだ)。無念。



今日釣り登った某関東の春の谷は、そんないつも行く春の渓とはうってかわって、しん、と静まり返っていた。
ヤマメが桜の花びらのように微かな薄紅色をさしたような可憐な姿をしているせいか、今日のこの渓流では、どうもヤマメが出る気がしない。


16#のクリップルダンに出てきたのは、イワナだった。やはりなんかこう、イワナの谷というのは幽玄と表現したらいいのか、独特の雰囲気があるのかも知れない。
ヒレがうっすらとオレンジ色に染まった、冬越えのおそらく一年仔だ。尾を鳥にかじられながらも、逞しく生き残ったのだ。





終わってみれば、源流域でもないのに不思議とイワナばかり。久々の渓流は、風がごうごうと鳴っていて、魔が差すようで少しそわそわした。目の前で大きな落石もあって、渓流の大石と衝突して弾けた。あれは地震だったのだろうか。
幽玄な春の谷のお話、でした。

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