仄暗いガレージの奥から。

仄暗いガレージの片隅に、ひっそりと置かれている古いBECKのタイヤ。

もともと焦げパンに履かれていたものだ。このときはHOT BIKE JAPANのコーナーで焦げパンのインプレをした池田さんが、当時物のこのつるっつるのタイヤで飛ばすものだから、船場の岡田学さんが「ヒヤヒヤしたよ」と回想していた。
ナツカシー。

よく見かけるベックではないんだよね。何だろね。

ふとガレージを整理していて、このホワイトウォールに戻そうかなと思い立った次第。
これは危ないから履くとしたらBECKのレプリカにするけども。

船場より。半世紀前の初代のオーナーは余程のBECK好きだったらしく、各所にその部品を伺い知る事ができる。もともとは真っ青なアズーリ・ブルーだったこの車両。きっとホワイトウォールのBECKも映えたことだろうと思う。



おそらく火事の際に燃え尽きてしまったのか、オイルタンクは55年のもの。奥に当時のパテント・デカールが残っている。所々リファインしてもなお、生々しい火事の傷跡を残して保持し続けた初代オーナーの矜持を感じる。そしてコレクターだったらしいセカンドオーナーに至っては、ピカピカのレストア好きが多いアメリカの中にあって頑なにこの一見醜いヨンパチを維持し続けた。正に鬼の拘泥というやつかも知れない。

その後に3番目のオーナーになったのが、ボクだ。焦げパンは極東の孤島に連れてこられて、今なんとか可動している。その間、60余年の歳月が流れた。

純正のこだわりに何だか精神的に疲れてしまった頃に出会った、時間の染み込んだヨンパチだった。
メーカー卸したてのフルオリジナルでなくてもいい。品格があって、凛として佇んでいればそれでいい。だから、余計なカスタムはしない。焦げパンが焦げパンでなくなるからだ。
近いうちに、タイヤは換えようと思う。

この寒い時期は部屋で、ちまちまと毛鉤巻き。
パラシュート系にもスペックルド・バジャーを使いまくってる。来るべき渓流解禁まで、渓魚を射る弾を一つずつ、鳥の羽根で紡いでいく。

今年はGWにチャンさんと、ふうさんも招き岩手釣行を企画しているので、そのためにあと50本は巻いておきたい。
takuさんたち山岳部隊とも合流して、東北の新緑を満喫しようと思う。

きっと、こんな朝が待っている。

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