2019年10月17日木曜日

復活ホットバイク(166号)



しばらく休刊状態となっていた、HOT BIKE JAPANが166号として復活した。

「これまでホットバイクを販売していたバイクブロス社が3月に廃業し、本を続けるにはそれなりに大きな資金が必要な状況に陥った。編集製作費はもちろん、大きいのは印刷代。出版業というのは面倒くさいルールでがんじがらめに縛られていて、発売した本の売り上げが現金化するのは半年以上先。つまり芳醇な資金なしに本を出版するのは難しく、当然俺にそんなものはない。」

そして、『俺様のチョッパー』をその資金の一部として手放した。

そこまでして刊行した編集長、池田伸さん渾身の一作である(いや、これからも続くのだけど)。

巻頭特集は神戸で開催されたNEW ORDER CHOPPER SHOW。


しかし出色だったのは特集「ハーレーダビッドソンよ、どこへ行く?」だった。
 ハーレー、大丈夫か?
 ぶっちゃけ昨今、そんな声を時折耳にする。
 その主たる理由は電気モーターバイクの販売を開始しエレクトリックの開発を加速したり、60度の水冷DOHCエンジンでビッグオフローダーを筆頭とする新ファミリーのラインナップを発表したり、中国企業に生産委託してミドルクラスの廉価版モデルを発表したりというカンパニーの企業姿勢を案じてのことだ。
 ちなみにハーレーを案ずる声の主には、食わず嫌いの“旧車最高現行否定”派も少なくない。現行車はつまらない、電動などけしからん。こうした人たちは特に日本に多いのだが、アメリカの老若男女を問わないバイカーやチョッパーガイから最新モデルを否定する声を聴いた記憶はほとんどない。「今のハーレー? 最高に決まってるだろ」。これこそハーレーダビッドソン愛、だ。メイドインアメリカのプライド。

 1903年の創業から、ハーレーダビッドソンはメカニズムやパフォーマンスという意味において世界最先端のモーターサイクルメーカーだった。そうした時代はナックルからパンヘッド登場に至るあたりまでは続いたが、69年のホンダCB750FOURを皮切りにメイドインジャパンが世界を席巻するのと時を前後して「巨大でノスタルジックな高級バイク」へと変貌。しかしローライダーSはハーレーダビッドソンを再び「世界最高レベルのクルーザーメーカー」へと返り咲かせたと言っていい。その間、半世紀。

 ハーレーダビッドソンというブランドには、二つの側面がある。
 ひとつは116年の伝統を持つメーカーとしての顔。俺たちが愛してやまないVツインを作り続ける、古き良きメーカーとしてのハーレーダビッドソンだ。
 1936年に生み出された空冷OHV挟角45度Vツインが、数々のモデルチェンジを重ねながらも基本構成をかたくなに変えることなく2020年に至る奇跡。それを享受できる我々は何と幸運なのだろう。
 同時に。ハーレーダビッドソンはアメリカを代表する企業であり、ビジネスとしてカンパニーを発展させていかなければならない宿命がある。1968年から1980年に至る“暗黒のAMF時代”を経験しているハーレーダビッドソンは、ビジネスとして会社を健全に存続させることの重要さをよく知っている。古き良き、だけで生き延びていけるほど今の世は甘くないのだろう。そのためのチャレンジこそが電動であり、水冷DOHC60度Vツインであり、中国企業に生産委託した338ccと言われる小型クルーザーである。
 良いものを作る、というのは(誤解を恐れずにいれば)簡単だ。優れたデザイナーと優れたエンジニア、芳醇な予算と話の分かる社長がいればいい。しかしそれが売れるかといえば、話は少しばかり複雑になる。出来上がった“良いもの”がマーケットに気に入ってもらえるか、買ってもらえるか。俺はライブワイヤーをぜひ走らせてみたい。良いもの=売れるモノではない。ビジネスというのは本当に難しい。
……全文はHBJ166にて。

時に辛辣ながらも冷静にハーレーダビッドソンの魅力のみを伝えるこの特集は突出したものがあった。ハーレーだけでここまで書けるものかと。
紙媒体はもちろん、即時性においてはインターネットに遥かに及ばない。しかし事象を咀嚼して取り込むこうした本の価値は、その文責を含めてもネットより遥かに大切な知的財産になると思う。


ロードエッセイは池田さんの真骨頂だ。文章が上手いなあといつも思う。クラブマンの故小野かつじさんから続く正統な血筋もあって、バイクに跨ってからの表現がとても美しい。毎回このエッセイが読めるだけでも十分な本だし、これまでもホットバイクの背骨のようなページがこのエッセイなんじゃないだろうか。





年4回の刊行予定とのこと。年間購読を申し込んで、もれなくマグカップが届くはずなんだけどまだ来ない。まあ、それはいいや。